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「おぉ」
「……広い」
天使と悪魔は由鶴たちと一緒に、前に約束していたプールに来ていた。プールといっても、小さい子用の滑り台があるものと学校にあるような25mのもの、それと深い(天使たちは沈む)ものがある市民プールで、レジャープールではない。
「たしかに幼稚園のプールに比べたら大分広いだろうな」
実は天使と悪魔の2人は、すでに幼稚園のプールで泳いだことがある(水着を買いに行ったのはそのため)。だが、規模があまりにも違うので驚いているのだ。
水着に着替えると2人ははしゃいでプールへ向かった。
天使と悪魔と母さんは小さいプール、由鶴と千鶴は深いプールにいた。由鶴は千鶴と話ながら適当に泳いでみたり沈んでみたりプカプカ浮いてみたりした。うん、意外とおもしろい。
「ゆづっ!」
小さいプールで遊んでいたはずの天使たちがすぐそこのプールサイドにいた。入れ替わりで、たまたま友達と会った千鶴は25mプールのほうへ移動した。
「……足、届かな、い」
天使と悪魔はうきわを使って浮いていた。足をバタバタさせているのか、少しずつ前に進んでいる。
「深いから気を付けろよ」
「はーい」
まあ目を外す気はないが。
「ゆづくん、母さん日陰があるところに移動するから」
ほんの一瞬だったと思う。呼ばれて母さんの方を向いた。
「わかった」
返事をしたら腰をあげた母さんがあら? と言った。
「シロちゃんとクロちゃんは?」 はっとして周りを見たがいない。2つほどうきわだけが浮いているのが見える。
まさかと思い下を見てみると……いた。2人そろって沈んでいる。急いで引き上げた。当の沈んでいた2人は溺れたようすもなくけろっとしている。
「……仲良く沈んでるなよ」
由鶴は呆れていた。
「全然浮かばんから途方に暮れておったんじゃ。助かったな、あーちゃん」
「……うん」
浮かばないと言うから、仰向けにしてみたらブクブクと沈んでいった。うきわがあってよかったと思う。
大きな騒動にならずに済んでほっとした由鶴だった。

今日わかったこと。天使と悪魔は、羽をつけて飛ぶことはできるが水に浮かぶことはできない(たぶん羽があっても沈む)。
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1学期の終業式の日、由鶴は帰ったらいきなり天使と悪魔の2人に怒られた。怒ることではないと思うのだが、2人には許しがたかったらしい。
終業式だから授業は半日で終わり、帰ろうかと思ったが、そのまま友達と遊びに行くことになった。
そう、これが原因。
母さんの話によると、天使と悪魔は、由鶴がいつもより早く帰ると聞き、が帰ってくるのを楽しみにしていたらしい。もちろん家に、友達と遊ぶから遅くなると電話をしたが、期待を裏切られた2人は機嫌を悪くしたとのこと。千鶴も部活動で帰るのは遅い。退屈でたまらないのと期待を裏切られたのとで機嫌は悪くなる一方。
由鶴が帰ったころには最悪だった。
「ゆづのバカぁー!」
天使にはバカなどとボロボロに言われ、悪魔には、痛くはないが、蹴られる。会社勤めの父親みたいに早く帰ると約束してない由鶴には、非はない。2人の単なる八つ当たり。何もしてないやられっぱなしな由鶴は少しムッとしたが、これだけやられるとなんだか自分が悪い気がしてきて謝った。
「ごめん。悪かった」
2人の頭を撫でると暴言や蹴りは止まった。
「……なら」
腕と服をくいっと引っ張られ、半ば強引に上がらされる。
「……あそ、ぶ」
「まさか今から? すぐにご飯だぞ?」
台所の方から手伝ってくれない? という母さんの声が聞こえてきた。
「ほら、手伝わないといけないからあとで、な?」
そう言うと由鶴を掴む手に力を加える。
「だって、そう言ってすぐに逃げるだけかもしれないではないか」
困った。このままだと手を放してくれそうにもない。
……あ、そうだ。
「じゃあ、みんながお風呂からあがったらかき氷を作って食べよう? 母さんもちづも一緒に。夜だからお腹壊すといけないし、少しだけしか食べられないけど」
天使と悪魔は少し考えてからゆっくりと手を放した。
2人に解放された由鶴はふうっと息を吐いて、鞄を置いてから手伝いをするために台所へ向かった。

夜、約束通りみんなでかき氷を食べた。部屋に行って布団に入ると何故か天使と悪魔もモゾモゾと入ってきて3人で寝ることになり、朝起きると3人とも汗をかいてて。由鶴はその日1日中天使と悪魔に付き合わされた。
「……ゆづ」
窓の傍に立っている悪魔に呼ばれて、どうしたと聞けば、同じく窓の傍に立っている天使が、前から気になっていたんじゃがと続ける。
「これは何じゃ?」
天使と悪魔が窓に吊るしてある物を指差した。
「ああ、てるてる坊主だよ」
今日は晴れているのだが、昨日が雨だったので作って吊るしていた。ちなみにティッシュで作った。
「……てるてる、ぼ、うず?」
「雨の日にこうやって吊るしていると雨が止んで、逆さにして吊るすと雨が降るんだ」
まあ、絶対というわけではないが。
「逆さになってるのは逆さてるてるっていうんだ。ていうか2人とも、梅雨がもうすぐ終わろうっていうときになって聞かなくても雨の日はずっと吊るしてあったろ?」
「ずっと聞くのを忘れとっただけじゃ。これはゆづが作ったのか?」
「そうだけど」
2人は急にモジモジし始めた。何が言いたいのかはだいたいわかる。
「ワシらも作りたい!」

ティッシュがもったいないので1人ひとつずつてるてる坊主を作った。由鶴の部屋の窓もずいぶん賑やかになったものである。吊るす際に天使と悪魔が逆さにしてくれと言ったので何故かと聞けば、雨の中の散歩がしたいと答えた。だから、てるてる坊主と逆さてるてるがふたつずつ仲良く並んでいる。
「おはよう、ゆづ」
「……おは、よ、う」
「おはよう。ほら、これ」
由鶴は起きたばかりの2人に何か投げた。2人は上手くキャッチした。
「どうしたんじゃ? これ」
由鶴が投げたのは2人の手のひらサイズのてるてる坊主のマスコットだった。
「てるてる坊主が気に入ったんだろ。あげる」
マスコットは由鶴の手作りで、カバンなどに付けられるようストラップが付けられていた。背中には羽も付いている。
初めて由鶴からプレゼントをもらい、天使と悪魔は大喜びした。2人は大切にそれを持っていた。
「ゆづくん、シロップ買ってきてくれない?」
暑い日が続くのでかき氷を作ろうという話になった。シロップはもちろん氷にかけるシロップで、メープルシロップの方ではない。
はい、とお金を渡された。買いに行くのは嫌ではないのだが、どの味がいいのかわからず悩んでいた。
「一緒に行ってもいいか?」
天使が由鶴の服の裾を引っ張りながらきいた。味で悩んでいた由鶴は天使と悪魔に好きなやつを選んでもらうことにし、3人でスーパーへ向かった。

「どれがいいかの……」
天使と悪魔の前にはかき氷のシロップが並んでいた。
「あーちゃんはどれがいい?」
「うーん……」
2人が悩んでいる間にコンデンスミルクを取ってくることにした。母さんから預かったお金に余裕があったのでついでに買おうと思ったのだ。
戻ったら天使が片手にシロップを持っていた。どうやら決まったらしい。選んだのはイチゴ味のシロップ。それとコンデンスミルクを持ってレジで会計を済ませ家に帰った。

帰ったらもう作る準備はできていて、由鶴たちの帰りを待つだけだったようだ。ただいまと言ったら、おかえりという声と氷を削る音が聞こえてきた。天使と悪魔は手を洗って台所へ行くと、いつものように目をキラキラさせながらジーッと氷が削られるところを見ている。早く食べたいようで、5人分できるまでソワソワしていた。
氷を削り終わると、母さんが、買ってきたイチゴ味のシロップとコンデンスミルクをかけて、はい、どうぞとみんなの前に置いた。
わーいと言って食べ始めようとする2人に、頭がキーンとするから気を付けろよと言いかけたが、すでに口の中に入っていた。
「冷た、い……」
「急いで食べるからそうなるんだ」
2人とも頭の痛さと戦っていた。落ち着いてから、ゆっくり食べれば大丈夫と言ったらゆっくり食べ始め、先程に比べるとあまり痛くないみたいで、おいしいと言いながら食べる。かき氷も気に入ったようだ。

天使と悪魔は食べ終わって舌を見たら赤くなっていて驚いていた。初めて食べたのがイチゴ味でよかったなと由鶴は思った。
「……雨」
「雨じゃ……」
昨日からずっと雨が降っている。時々弱くはなるが止みはしない。梅雨なのだから雨はしょうがない。あと、この蒸し暑さもしょうがない。だが、外で遊べないということは、天使と悪魔にとって耐えがたいものだった。しょうがない、で済ませられないらしい。
もちろんはじめは家の中で特別文句も言わず遊んでいたのだが、やはり外で遊ぶほうがいいらしく、とうとう限界がきたようだ。
「ゆづー、雨はいつになったら止むんじゃ……?」
「……外……遊びた、い」
雨がいつ止むかなんて由鶴が知っているわけがない。うーとか、あーと言っているのが次第に、外、外とコールし始め、さすがに少しうっとうしくなってきた。
「そーと、そーと……」
「……はぁ。もう、わかったからその外コールは止めてくれ」
結局いつも通り、折れるのは由鶴。由鶴は2人に、カッパを着てこいと言い、自分も外に出かける準備をすることにした。
「雨の中で何をするのじゃ?」
「散歩」
由鶴は傘を差して、天使と悪魔はカッパを着て雨の中の散歩に出かけた。カッパを着ていて長靴を履いている2人は濡れる心配がないので走ったり、わざと水溜まりの中に入ったり……。帰ったらすぐに風呂行きなのは決定事項となった。当然由鶴もそうである。はしゃぐ2人を見て楽しそうだなと思った由鶴は、どうせ帰ったら風呂に入るんだし、と一緒になって散歩を楽しんだ。

雨の中での散歩という初めての経験をした天使と悪魔は大変満足をしたという。また行きたいと言う2人に散歩が気分転換になった由鶴は、雨が降ったらなと笑って言った。
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