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「……頭が痛い」
 今朝は目が覚めると頭痛がした。少し熱っぽい気もする。風邪を引いたのかもしれない。
 休日だし昼まで寝ていよう……と思ったのだが、
「ゆづー、朝だぞー!」
「……どー、ん」
「うぐっ…!」
 天使と悪魔が起こしに来て由鶴の上に飛び乗った。2人一緒に、だ。弱っている身にこれは辛い。
 いつもと違う由鶴に悪魔が気付いた。
「……ゆづ、顔赤い」
「本当じゃ。ゆづ母、ちづー!」
 2人がバタバタと大きい音を立てながら階段を下りていく。由鶴のための行動だろうが、今の由鶴にその騒がしさはありがた迷惑だろう。

「……38度。病院はどうしようか?」
「行かない。寝とけば治るよ」
 お昼はお粥を作って持って来るわねと言って母さんと千鶴は部屋を出ていった。天使と悪魔はまだ残るようで、じっとベッドのそばから離れずに座っている。風邪か移るかもしれないから向こうに行ってろと言っても離れない。
 もう放っておいてもいいのだろうか。そろそろ寝たい。
 寝ようとして目を瞑るのだが、なかなか眠れない。 
「……」
 いつもうるさいほど騒ぐ天使と悪魔がいるのにこんなにも静かだなんて、不気味だ。不思議じゃなくて不気味だ。
「なあ」
 声をかけるとピクッと反応する。
「下から冷えピタとタオルを持ってきてくれないか?」
「……うん!」
 頼まれるのを待ってたかのような、嬉しそうな返事をして、またバタバタと階段を下りていった。
 だから静かに下りろって……。

 それから天使と悪魔は昼ご飯のお粥を持ってきたり、自分たちの分も持ってきて一緒に食べたり、ずっと由鶴のそばにいた。そして翌日、
「……はっくしょん!」
「……くしゅん」
 2人は風邪を引いた。天使や悪魔でも風邪をひくらしい。2日ほど寝込んだ。

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「早く、早く」
天使と悪魔は浮き足立っている。理由は、
「……まつ、り」
夏に行ったとき、よほど楽しかったらしい。祭りに行くぞと言うと大喜びだった。今も何か歌っている。
「かき氷、ヨーヨー、金魚すくい」
「……りんごあめ」
「……それ、全部ないぞ」
言った途端、天使と悪魔の動きと歌が止まり、そして、ゆっくりと由鶴のほうを向いた。なんだかとてもショックを受けているようで、車内は急に静かになってしまった。
居心地が悪くなった由鶴は何とか元気が戻るよう2人に話しかけた。
「あー、でもな、代わりにもちとかならあるぞ」
由鶴の言葉に反応した。
「もち?」
すかさず千鶴が続ける。
「うん。食べ物だったらうどんやコロッケもあるし、あと、ブローチを作るのもできるし。ほかにも楽しいことたくさんあるよ」
だんだん天使と悪魔の表情がわくわくしたものに変わっていく。
「本当か?」
「もちろん」
「……たのし、い?」
「きっと楽しいよ」
わーいと、落ち込む前の状態に戻った。由鶴ははーっとため息をついて、千鶴はにこにこしながら天使と悪魔を見た。

天使と悪魔が見てくれと由鶴に作ったブローチを持ってきた。少し不格好なそれを見てクスッと笑ってしまった。
「ほら、もちとうどん」
用意してあった椅子に座り、机に置かれたもちとうどんを食べ始める。今ここで食べているのは由鶴と天使と悪魔の3人だけ。千鶴と母さんは展示物を見に別行動をしている。
つまり今の由鶴は天使と悪魔のお守り役である。
「ごちそうさまでした」
「じゃあ、ごみをごみ箱に捨ててこい」
「はーい」
楽しそうにしている2人を見ていて、いつもしているお守りも悪いものではないかなと思った。
「次はどこに行きたいんだ?」
「お団子食べたい」
「ははっ、おまえら食べ過ぎ」
11月にもなると昼でも少し肌寒く感じる。
にもかかわらず、由鶴たちは河原に集まっていた。今日は由鶴、天使、悪魔、千鶴だけじゃない。昇一や天使たちの友達の和希と直太もいる。
「今からプチ運動会を始めるぞ!」
寒いのなら体を動かして温かくすればいい。何をするのか考えたら『運動会』という案に至った。案を出したのは千鶴だった。
「この人数で?」
「それに人数も半端だな」
由鶴と昇一の意見はもっともだった。人数は7人。2組に分けたとして3人ずつで1人余ってしまう。
「それなら心配ないよ。幼稚園の子が4で高校生が2人だから2人と1人ずつで分けてあたしは審判」
種目は徒競走と障害物という、名前の通り小さな運動会だ。でも小さい4人はすごく張り切っていた。

組分けは、天使・和希・昇一の組と悪魔・直太・由鶴の組とになった。今から徒競走が始まる。はじめは天使と悪魔の対決。
「よーい……ピィッ!」
審判の千鶴はゴール地点で待っているため、昇一の笛の合図で走り始めた。50m強ある距離を全力で走る。何となく想像はしていたが速い。幼稚園でこの2人が1番を争うのではないだろうか。
「1位クロちゃん。シロちゃんは2位」
天使は少し悔しそうな顔をしたがすぐに次の応援をし始めた。
残りの対決は、和希と直太では和希、昇一と由鶴では僅差で昇一が勝った。
「次は障害物です。よーい……ピィッ!」
この障害物競走はリレーで、まず第一走者の天使と悪魔が走り出して用意してあった一輪車に乗る。そしてそのまま第二走者のところまでこぐ。第二走者の和希と直太はフラフープで10回跳び、第三走者のところまで走る。第三走者の昇一と由鶴は道具は使わず、片足だけでゴールまで進むというもの。
「……1位ゆづ兄ちゃん。2位はしょうちゃんだよ」
これで全種目……といってもたった2種目だが、終わって千鶴から結果発表があった。徒競走では1位2点で2位1点、障害物では1位3点で2位2点。一応点がつく勝負なのだ。
「結果発表ー。えーっと……しょうちゃんの組が7点、ゆづ兄ちゃんの組が7点なので、引き分けです」
「ははっ、勝ち負けなしか」
「いえーい!」
勝負はつかなかったが、まあ、体が温まったしよかった、のだろうか。

家に戻ってみんなで肉まんを食べた。プチ運動会のご褒美だそうだ。温かくておいしかった。
10月31日の今日はハロウィン。というわけでいつもより少し忙しい……由鶴だけは。
「ハロウィン、ハロウィン」
天使と悪魔はすっかりテンションがハイだ。母さんが作ったハロウィン用の服を着て踊っている。9月の終わり頃から何を作っているかと思えばこれだった。千鶴は変わった服を着ているわけではないが、ハロウィンに合わせてだろう。オレンジの服を着ている。母さんはいつも通り、何の変わりもない服で、残る由鶴はというと普段着にエプロン。
理由は今日の由鶴の仕事にある。
「おまえたち台所の近くで踊るな! 騒ぐな! 埃を舞わせるな! じゃないとお菓子なしだからな」
「はーい」
お菓子作りだ。
天使と悪魔がよく食べる上に昼からは昇一が来る。大量に作らなくてはならない。家族から「かぼちゃのお菓子が食べたい」と言われたら作らないわけにはいかないだろう。少なくとも由鶴はそういう人間だった。
現在10時なのだが、実は7時から作っている。頭に浮かんだお菓子、比較的手間のかからないものを片っ端から作っていた。自分でもどれだけ作るのだろうとは思っているが、作り出したら止まらなくなったのだ。
「あとはクッキー焼いて、パイ焼いて、それから……」
昼ご飯がお菓子になる勢いでどんどん出来上がっていった。

「こんにちはー、おじゃましまーす」
インターホンが鳴って昇一が入ってきた。出迎えた天使と悪魔の2人の格好を見て似合ってるじゃんと褒めたあと、リビングに入った昇一はテーブルの上に置かれているお菓子の量に驚いた。
「……今回頑張ったな、ゆづ。何て言うか……まだ来るのか? 人」
「いや……もう来ないよ、しょう」
はは、と笑いながら言った。由鶴も自分の作ったお菓子の量に驚いていた。
「みんな、食べましょう」
椅子に座って自分が好きなものを食べた。もちろん食べているのは由鶴が作ったお菓子。それと、別に作ったかぼちゃのスープ。かぼちゃづくしの昼ご飯だ。
うん、おいしい。
「おいしーい!」
「……おい、しい」

結局お菓子は半分ほどしか減らず、おみやげで昇一に持って帰らせ、近所に分けた。
次は作りすぎないように気を付けよう。
……だけど次っていつだろう。
あ、クリスマスか。
「見て見てー!」
学校から帰ると天使と悪魔が飛びついてきた。まあ、いつものことなのだが。
「だから靴を脱いでからにしろっていつも言ってるだろ」
「……たくさんとっ、た!」
2人は小袋を持っていて、由鶴に中を見せた。中に入っているのはイチョウや紅葉の葉とどんぐり。幼稚園で落ちていたのを拾って袋に入れたようだ。
「あとな、幼稚園で銀杏というものを食べたぞ」
「へえ、よかったな。おいしかっただろ」
「……うん」
銀杏がおいしくてどんぐりとかを拾ってきたのはいいのだが。
「それ、どうするんだ?」
せっかく拾ってきたのだからすぐに捨てるのは、もったいないではないが、そうするならはじめから拾わないほうがいい。しかし、だからといって何に使うのか……。
「みんな玄関で何してるの?」
帰ってきた千鶴が不思議そうに由鶴たちを見た。
そうだ。まだ家に上がってなかったんだった。
千鶴に天使たちが持って帰ったものをどうしたらいいのかと聞くと、画用紙に貼るのはどうかと提案してくれた。
「どんぐりは工作でも使えるよ」
「そっか……じゃあとりあえずどんぐりを分けるか」
荷物だけを玄関に置いて外に出た。
「……何で、分け、る、の?」
「虫が入ってるのもあるからね」
由鶴がさっそく小袋に入っているどんぐりを1つ取り出して軽く振ってみる。するとカラカラと小さな音がした。
「これみたいに音がするのは虫が入ってるやつで、音がしないのが入ってないやつな」
「ほー……」
小袋からどんぐりを全部出して、虫が入っているのと入っていないのとに分けた。
「次、はっぱ貼る!」
「それはご飯食べたあとだぞ」
ちょうど母さんの声が聞こえてそばの窓が開いた。
「今日の茶碗蒸しは銀杏入りよ」
「わーい!」
みんなで走って家に入った。
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