忍者ブログ
[4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

どうしても気になるので聞いてみることにした。落としものについて。そしたらあっさりと教えてくれた。
「輪と角じゃ」
いままで教えてくれなかった理由も聞いてみると、悪魔曰く、聞いてこなかったかららしい。それならもっと早く聞けばよかったと、由鶴は思った。
天使と悪魔は聞けば答えてくれるとわかったところで、もうひとつ聞いてみた。
「羽もそうだけど、普段はちゃんと付けているんだろ?」
2人が縦に首を振って頷く。
「だったらどうしてなくなったんだ?」
「それはじゃの……」
急に口ごもったが、しばらくして話始めた。嫌だったら話してもらわなくてもよかったのだが、話してくれるのなら聞こうと思い何も言わないことにした。
「……普段、外すことは、ない……けど」
「どうしてもやってみたいことがあっての」
やってみたいことというのは自分たちのものを交換すること。
2人とも、違う形をしている羽を付けているのに同じことができるというのを不思議に思っていたという。羽を交換するなら、せっかくなので輪と角も交換しようということになった。
はじめは上手く飛べていたらしい。だが、羽らが拒絶反応を起こしたのだろう。次第にコントロールできなくなり、ついには離れて輪や角は落ち、羽は勝手に飛んでいった。2人は慌てて羽を追いかけたが見付からず、女神様のところへ向かい、正座で説教をされてここに来、今に至る。
「説教か……。きつかったな」
「すぐに行けば説教が短くて済んだんじゃがな」
「……パニック、なって、すっかり忘れて、た」
2人の頭を撫でてやった。
「ゆっくり探せばいいよ。探すものがわかったから僕も探すことができるし」
見付かるまでここを楽しんだらいい。
向こうではフーやムー、女神様たちがいみたいだけど、普段は2人だけのように言っていたから、誰かとふれあうのは良い機会なのではないか。
そう思いながら天使と悪魔を見ていた。
PR
昨日、天使と悪魔を連れて近くに2人の『落としもの』を探しに行ったのだが、見つからなかった。
そもそも2人の『落としもの』って何だろう? 羽以外で天使と悪魔に足りないものといえば、輪と角と尻尾だろうか。
「おーい、由鶴、弁当食おうぜ?」
「じゃあ、屋上にでも行くか」
考えている間に昼になっていた。考えすぎだろう、と言われるかもしれないが、それくらい気になる。
だって何も教えてくれないんだ。形も大きさも色も何もかも。
昨日は天使と悪魔を色んなところへ連れていくだけだった。
「うーん……」
「何唸ってんだ?」
「あー……いや、何でも……ん!?」
ゴホッ、とむせた。むせた原因は由鶴の視線の先にいる人物にある。
どうして2人がここにいるんだ……。
「やっぱり屋上は少し暑いな。教室に戻ろう、な?」
見られては色々と面倒なので、先に戻ってて、と言って友達を屋上から追い出す。
「さぁて。おまえたちがここにいる理由を聞こうか?」
いきなり屋上に現れたということは、この2人――天使と悪魔の場合は空を飛んできたというわけで。
「ゆづ母がな、ゆづがここにいると言っていたのでな、来てみたのじゃ」
「……暇、だったか、ら」
ひとつ溜め息を吐いた。
「とりあえず、ここには来るな。空を飛ぶな」
そう言うと2人はショボンとした。今にも泣き出しそうな顔をしている。由鶴はこういうのに弱い。
「……僕が悪かったよ。でもな、2人がここにいるとみんなが騒ぐんだ。そうなると大変だろ? 帰ったら一緒に遊べるから」
聞き分けがいいらしく、天使と悪魔は頷いて走っていった。そして、たぶん家に向かって飛んで帰っていった。
だから飛ぶなって……。
「おいしいのう、これは」
「……初めて食べ、た……」
今はみんなで昼食をとっているところ。初めは出されたうどんをジーッと眺めていたり、嗅いでいたり、警戒したりしていた。箸の使い方を知らないみたいで、フォークを使って食べている(フォークの使い方も知らなかったようで、机やうどんをグサグサと刺していた)。
「食べ終わったら『ごちそうさまでした』って言うのよ」
こうやって。
母さんが合掌をして、ごちそうさまでしたと言う。それを真似て、2人はごちそうさまでしたと言った。
「おまえたち、向こうで何を食べていたんだ?」
「何をと聞かれても」
「……何も」
食べ物というものを食べたのは初めてと言う。何も食べなくても平気らしい。
天使と悪魔は由鶴の部屋まで走っていき、ドアを開けるなり驚いた顔をした。由鶴もそこへ行けば固まった。
部屋の窓に小さい生き物が2つ(20cm程しかない。ぬいぐるみみたいだ)、引っ付いているのだ。
見なかったことにしたかったが、そういうわけにもいかないので開けて中に入れてやった。
「あービックリした。なんじゃ、フーとムーじゃないか」
「……フーと……アホ、ムー」
「誰がアホだ、バカ悪魔!」
悪魔とムーと呼ばれた黒い生き物は、いがみ合ってはいたが、絶対仲が良いと由鶴は思った。
「ところで、どうしたんじゃ?」
フーと呼ばれた白い生き物が何かを思い出したように、ポンッと手を叩いた。そして、籠らしき物を出した。何かが入っている。その『何か』を見た天使と悪魔は喜んでいた。
「あちらで見つかったので持ってきました。女神様からの伝言で、はよう残りも見つけてこい、とのことです」
それではと言って、フーとムーは帰っていった。最後まで悪魔とムー互いの悪口を言い合っていた。きっと、いつもこんな感じなのだろう。こういう関係もいいなぁ、と思ったりしてみた。
ところで……。
「それ、何だ?」
「羽じゃ」
「へー……って、えぇ!?」
あまりに小さいので羽だなんて思わなかった(ちなみに由鶴の掌サイズ)。ていうか、羽って着脱可能……?
もう少しくらい考える時間を与えてくれたってよかったのにね。神様、そんなに時間が惜しいですか?
「えっと、あの、その……あ、あれだよ。えーっと……」
どうやって説明したらいいものか。正直に、天使と悪魔がやって来て、行く当てがないから家に泊まらせてやってくれ……?
うーんうーん唸っていると、母さんの方が先に口を開いた。
「可愛いお嬢ちゃんたちね。ゆづくんのお友達かしら? ごめんなさいね。気付かなかったわ。今何か飲み物を持ってくるから待っていてね」
「ちょっと待っ……母さん!」
由鶴の言葉に耳を貸すこともなく部屋を出ていった。
「飲み物とはなんじゃろうな。まぁ、それはともかく、何やら」
「……あっさり、と」
「ことが運びそうじゃ」
「……いや、あっさりとことが運んでしまうとそれはそれで怖い」
杞憂だった。
母さんは2人のことを気に入ったらしく、居候をする件もあっさりと承諾(少しは悩んでくれ。おかしいと思ってくれ)。途中で妹の千鶴も参加し、難なく家族と打ち解けたらしく、由鶴はもう会話に入れない状態。
「そうだ、名前聞いてなかった。なんていうの?」
天使が自分たちのことを『天使と悪魔』と紹介し始めたので、由鶴は慌てて天使の口を手で覆う。そしたら悪魔も口を開いたので、こちらも慌てて手で覆った。これから苦労が絶えないことを悟った。
「おまえたち、名前は?」
母さんと千鶴に背を向けて、2人に聞こえないように小声で聞く。そういえば天使と悪魔の名前を知らない。
「そんなものないぞ?」
「は?」
ないことはないだろう、そう思ったがどうやら本当らしい。互いのことを『あーちゃん』『てんちゃん』と呼んでいたが、よく考えれば、それは天使、悪魔からとったものだということがわかった。「ないものはない。ないから天使と悪魔で通してきたんじゃ」
名前はなければ困る。非常に単純なものだが名前を付けることにした。
「母さん、ちづ。こっちが白で、こっちが黒」
「シロ?」
「……ク、ロ……」
天使の名前を『白』、悪魔の名前を『黒』とした。2人の服の色を見て決めた。至って単純なものだった。自分たちに与えられた名前を気に入ったのかそうではないのか、自分の名前を何度も復唱していた。
「わぁ、覚えやすくていい名前だね。ね、母さん」
「そうね。シロちゃんとクロちゃん。本当にいい名前ねぇ」
なんとか危機を乗り越えて安堵をついたが、母さんがとんでもないことを言い出した。
「2人とも、幼稚園に通ってみない? 楽しいわよ」
その提案に千鶴も賛同した。天使と悪魔は、『楽しい』という言葉に惹かれたのか、口をそろえて行きたいと言った。
この流れからすると……。
「行きはゆづくんお願いね」
あぁ、やっぱり?
「……あ、うん」
「悪魔と天使……?」

信じられますか、これ? 信じられませんよね? 目の前に架空のものが存在していますよ?

「そうじゃ。人のいない場所に降りようと思っておったが、ちょっとしたミスでここに降りてしまったようじゃな」

「……それ、てんちゃんのミス」

「まぁ人間界に降りることができたんじゃからよかろう?」

悪魔は頷く。降りられたらどこでもよかったのか!

「ちょっと待ってくれ。俺はよくない」

「これからどうするかの、あーちゃん?」

由鶴を無視して2人で相談し始めた。うーん、と唸っている。

由鶴は、出ていけ、と言いかけて喉の奥に引っ込めた。今の状況は信じられないし信じたくもないが、もし2人が本当に天使と悪魔であるのならという考えが浮かんだ。

「よし、あーちゃん、とりあえずここを出るぞ」

「なぁ」

何故かドアではなく窓のほうに向かっていた2人を呼び止めた

「なんじゃ、人間?」

不本意ではあるが、由鶴はこれを言うことしかできなかった。

「うちに泊まれ」

「いいのか、居ついても?」

「あぁ、どうせ行く当てもないんだろ?」

一拍置いて天使が歓喜の表情を浮かべた。

「あーちゃん喜べ。ここに居ついてもいいらしいぞ」

よほど嬉しかったのか、さっきまでずっと無表情だった悪魔が少し笑顔になっていた。そっか、笑えるのか。

微笑ましかったが、問題があることに気付き憂鬱になる。この2人をどう説明しようか……。

コンコンとノックされドアが開いた。入ってきたのは洗濯物を持った母さんだった。

「ゆづくん、さっき大声を上げていたみたいだけど……あら?」

母さんの視線の先は天使と悪魔の2人。

ほら、考える間もなく見つかった……。
・・――サイト案内――・・
                                日記・イラスト・小説を更新していくブログです                               HNの表記は、ひらがなでも、カタカナでも、漢字でも、アルファベットでも何でもよいです                                ほのぼの・ほっこりした小説を目指してます                                 絵に関してはイラストというより落書きが多いかも…                                                      と、とにもかくにも、ポジティブなのかネガティブなのかわからないtsubakiがお送りします
最新コメント
[04/08 つねさん]
[12/10 クレスチアン」]
[03/18 りーん]
[09/30 弥生]
[08/08 クレスチアン]
ポチッと押してみようか
blogram投票ボタン
プロフィール
HN:
tsubaki
性別:
女性
自己紹介:
ものごとを『おもしろい』か『おもしろくない』かで分けてる“へなちょこりん”です
外ではA型、家ではB型と言われます(*本当はB型)
家族に言わせれば『しゃべりだすとおもしろい』らしい
寒天と柑橘が大好きです^^
フリーエリア
ブログ内検索
バーコード
アクセス解析
忍者ブログ [PR]
Template designed by YURI