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 2学期も始まって、天使たちと一緒にいる時間が少なくなった。でもやっぱり家に帰るといつものように賑やかなのは変わらない。由鶴が勉強しているのもお構いなし。
「ゆづー、ワシらにもその問題やらせろー!」
「……やり、たい」
「いや、やりたいって、これ宿題……」
 解いたとしても答えを持っていないので答え合わせができない。せめて明日まで待て。そう言い聞かせても構わないからやらせろと駄々をこねる。ほかの問題を渡すがこれじゃないと嫌だと言って聞かない。
 しょうがない、と2人に問題をコピーして渡したら黙々と解き始めた。由鶴のほうが早く解き始めたのに2人はもう追いつこうとしている。何故こんなに解くのが早いんだ。
 もちろん天使と悪魔のほうが早く終わった。
「……負けた」
 勝負ではないが悔しい。それに天使と悪魔が勝ち誇ったような顔をしているのがムカッとくる。
「ご飯できたわよ」
「はーい」
 由鶴は溜め息をもらしながら階段を下りていった。

 次の日。
 答案を渡され採点をした。全部合っていたので安心……したのだが。
「よし、ワシもあーちゃんも満点じゃ!」
「……わー、い」
 由鶴はがっくり肩を落とす。自分も満点だったが、自分より早く解き終わった2人も満点だったことにがっくりきたのだ。
「なんか負けた気がする…」
 自分に自信がなくなった由鶴だった。

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「もっとゆっくり解いてくれればいいのに……」
 天使と悪魔から解放、もとい逃げ出した由鶴は図書館に来ていた。家で勉強を終わらせようと思っていたのだが、生憎そうさせてくれないものが2人ほどいたため静かに勉強できる図書館まで行くことになった。
「まあ、もう少しで終わるとか言いながら終わらない自分も悪いんだろうな」
 2人に何か買って帰ると決めて、急いで残りの勉強を仕上げるは少し楽しそうな顔をしていた。

 一方の天使と悪魔はとても機嫌が悪く、ふてくされていた。
「2人とも、おやつにしない? シャーベット作ったから」
「あ、そうだ。外でビニールプールで遊ぼうか」
「……」
「はあ……。どうしよう母さん」
「そうねえ……」
 母さんや千鶴が気を遣って声をかけるが反応はない。お手上げ状態な2人はシャーベットを食べながら由鶴の帰りを待つ。
「ゆづ兄ちゃん、いつ帰ってくるの?」
「5時くらいじゃないかしら」
「それまでどうしようか……」
 母さんと千鶴は同時に溜め息を吐いた。

「ただいまー」
 5時半。帰ってきた由鶴がドアを開けるとそこには天使と悪魔がいた。いつもだったら勢いよく抱きついてくるはずなのだが今日は違う。まるで終業式の日のような、いや、あの日よりもっと機嫌の悪い2人が由鶴を迎えていた。
「えっと……ただいま?」
 返事はこない。奥でおかえりと言う、何やら気まずそうな母さんと千鶴の姿が見えた。もしかして原因は自分にあるのだろうか。
「……ゆづの……馬鹿ー!」
「は?」
「……もう少、し……言った、のに!」
 原因がわかったが、どうしよう。天使と悪魔に叩かれる。結構痛い。
 ……あ。
「これ!」
 袋の中に入ってたものを2人に見せた。
「……」
「夜にみんなでやろうと思って。やったことないだろ、2人とも?」
「わあ! ゆづ兄ちゃん、これ買ってきたの?」
 由鶴が見せたのは花火セットだった。
「これで機嫌直してくれ、な?」
 黙ったままだった2人だったが、天使が口を開いた。
「……明日」
「明日?」
「明日1日ワシらと遊べ!」
「……あと、かき、氷!」
「ははっ、いくらでも遊んでやるよ」
 またかと笑いながら由鶴は答えた。

「あーそーべー!」
「……あそ、ぼ」
 それドーンッ、と由鶴の背中に飛びついた天使と悪魔。2人はどうやら暇らしい。飛びつかれた由鶴は机に腹をぶつけて痛そうにしていた。
「どうした、ゆづ?」
「おまえらなぁ……」
 自分たちが原因だとは思っておらずしれっとしている。それどころか遊べ遊べと連呼している。だが何度遊べと言っても首を縦に振ってもらえない。頬をプクッと膨らませる。
「勉強してる最中だからダメだって言っただろ」
 更に頬を膨らませる。まだ遊べ遊べと言っている2人を無視して勉強を再開する由鶴だったが、さすがに無視できないうるささになったのか、手を止めた。天使と悪魔は問題集と紙、鉛筆を渡されポカンとする。
「それやって待ってろ」
 由鶴から渡された問題集。これを全部解けば遊んでもらえる。そう思った天使と悪魔は床に寝転がり張り切ってとりかかった。元々頭がいいのに加え張り切ったこともあり、なんと30分で終えてしまった。
「……もう、終わっ、た」
「はあ……」
 天使と悪魔が終わっても由鶴は終わっていない。由鶴は鞄の中に勉強道具を入れて部屋を出て行った。もちろん天使と悪魔も由鶴のあとを追って部屋を出て行った。
「ゆづくん、出かけるの?」
「ちょっと図書館に行ってくる」
 靴を履いて出かけた由鶴を2人は見ていた。あろうことか、自分たちを置いてけぼりにして出て行ったのだ。
「……ゆづの馬鹿ー!」

「わーい……いたっ!」
 走り出したら途端に天使と悪魔が転んだ。初めての砂浜だったので上手く走れなかったようだ。
 天使たちは海に来ている。
「……口、砂入っ、た」
「全く、何やってるんだ。走るんなら気を付けて走れよ」
 由鶴は転んだ2人を抱えて起こした。注意されて、はーいと元気良く返事したにもかかわらずまた少し走って転んだ。後ろで由鶴が額に手を当てて溜め息をこぼしていた。
「何してるの、ゆづ兄ちゃん? 置いてくよ?」
 天使と悪魔用のうきわを持って千鶴の後を追いかけた。
 天使と悪魔は波打ちぎわで山のようなものを作っていた。幼稚園でも作ったことがあるのだろう。高くするために水をちゃんと使っている。
 しかし、山の高さが2人の背の半分くらいの高さになったところで、波によって崩された。
「あー!」
「……くず、れた……!」
 波打ちぎわで作っているのだから、もちろんその高さに至るまで波に襲われはしたのだが、この波でついに全壊。天使たちはガックリ落ち込んでいた。
「そんなところに作るから……」
「あのね、バケツもあるし、ここらへんで作ればいいんだよ。ここなら波もこないから」
 山があった場所から少し後ろに下がったところで千鶴がそう教えた。2人は急いでバケツに海水をくんで黙々と山を作り始めた。懐かしくなったのか、由鶴と千鶴も一緒になって山を作る。4人での作業だから短い時間で天使たちと同じくらいの高さの山ができた。
「わーい、できたー!」
「……次、泳ぐ」
 わー、とうきわを持って海へ走っていった。
「切り替えの早い奴らだな……」
 作った山は放ったまま楽しんだ。はじめは見ているだけだった母さんも途中で加わって5人で。
 その夜は疲れ果てて、いつもより早く眠った。

 海に入った時に、プールはダメでも海でなら浮かぶだろうと思って浮かばせてみたら、やっぱり沈んだ。なんで沈むんだろう。

「シロちゃん、クロちゃん、ちょっと来てくれる?」
 呼ばれた2人は由鶴と下に下りていった。
「はーい……って、どうしたんじゃ? その着物」
「浴衣っていうのよ。2着あってよかったわ」
 母さんは黄色と紺色の浴衣を並べて見ていた。帯も2つある。
「黄色がシロちゃんで、紺色がクロちゃんね。2人ともかわいいわ」
 2人に浴衣を着せてみた。サイズもちょうどよくて裾上げをしなくてもよさそうだ。
「今夜はこれで行きましょうね」
「……なに、か、あるの?」
「ああ、祭りがあるんだよ」
 祭りって何? と顔に書いてあるので由鶴は天使と悪魔の2人に説明した。
「人がたくさんいて賑やかでな、かき氷や焼きそばの屋台があるんだ」
「金魚すくいとかも楽しいよね」
 上にいたはずの千鶴がひょこっと出てきた。天使と悪魔はかき氷という言葉に反応して目を輝かせている。口を開けてよだれが垂れそうだ。
「ねえ、お母さん! あたしも浴衣着て行ってもいい?」
 じゃあ裾を下ろさないとね、と言って、母さんは千鶴の浴衣を出しに行った。祭りとなると準備があって忙しい。
「ゆづ兄ちゃんは甚平着るの?」
「そうだな、せっかくの祭りだし、着て行くか」
 祭りが楽しみな4人は、にししと笑った。

 みこしもあるんだぞと言って、絵を描いて教えたらそれも楽しみなようで落ち着きがなかった。
「はい、これでいいわよ」
 母さんがかわいいと連呼している。天使と悪魔は髪を結んでいた。千鶴のほうも着替え終わり、天使と悪魔の2人と同じでいつもと違う髪型をしていた。3人とも似合ってる。
「ゆづくんも似合ってるわよ」
「うん、ゆづ兄ちゃんかっこいい!」
 褒められてちょっと照れた。かっこいいなんて普段言われない。
「はは、ありがとう。おまえらはなんだか姉妹みたいだな」
「あら、そうねえ」
「なら、あたしお姉ちゃん? やった、嬉しい!」
 天使と悪魔と千鶴は女の子同士できゃっきゃはしゃいでいた。由鶴には入れない世界がそこにはあったが、うん、微笑ましい。千鶴も妹ができたみたいで嬉しそうだ。

 初めての祭りを思いっきり楽しんだ天使と悪魔。もちろんかき氷も忘れずに食べた。自分たちもみこしをやりたいと言い出した時はどうしようかと思ったが、由鶴も楽しめた。みんな文句ない祭りだった。

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