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「お掃除部隊!」
「なの、だ」
 大声でポーズまで決めて登場した天使と悪魔。手にはほうきや雑巾を持っている。
「ここはあとでやるから、先にちづのところ手伝え」
 はーいと元気のいい返事をして隣の千鶴の部屋へ移動していった。
 年末大掃除ということで、千鶴と由鶴は自分の部屋にこもり、母さんは1階で各々片付けをしている。天使と悪魔は手伝いだ。2人は初めての大がかりな掃除にテンションが上がっている。
「さてと」
 賑やかな天使と悪魔が千鶴の部屋に移ってから、由鶴は改めて部屋を見た。散らかっているわけではないが、いろいろ探ってみたら何か出てきそうな気がする。とりあえず勉強机から手を付けてみることにした。
「これは捨てるやつで、こっちはいるやつだから置いといて……」
 思ったよりも順調に進んで、あと30分あれば終わりそうだ。
部屋が半分くらい片付いたときだった。片付けていたクローゼットの奥に見覚えのない物が転がっていた。
「何だ、これ?」
丸い輪のような物が1つと先が尖っている物が2つ。輪のほうは手のひらくらいで、尖っているほうは2つ一緒に手に乗るくらいの大きさだ。
「何だったかな……」
 これが何か知っている気がする。だけど思い出そうとしても思い出せない。
「由鶴、お昼じゃー!」
 天使の呼ぶ声がした。捨ててはいけない物のように思えたので、とりあえず輪と尖った物を元の場所に戻してから由鶴は部屋を出た。
 そのあとは、見つけた変な物に触れないまま年が明けていった。
 その変な物が由鶴の思っていた以上に意味のある物だということを、その時は誰も知らなかった。
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「クリスマスー!」
 天使と悪魔はわーいと言いながら部屋をぐるぐると回ると由鶴に体当たりして尋ねた。
「おまえらなぁ……」
「なぁ、ゆづ。クリスマスとはイエス・キリストの誕生を祝う日じゃろ?」
「……バース、デー」
 何を言うかと思えばそれか。
「本でそれだけ知ったんだろ?」
 聞くと2人は同時に縦に首を振った。
 天使と悪魔は物知りだけどやっぱり全て知っているわけではなくて、うどんの時もそうだけど知らないものは知らない。知らないことを何でも人に聞きたがるあたり見た目通り子供で、かわいいなと思うこともある。
「イエス・キリストは12月に生まれてないことだけは確からしいぞ」
 すごくショックを受けたようで、固まった。
「で、でも本にはそう書いてあったぞ」
 天使の言葉に悪魔もうんうんと首を振る。
「でもじゃなくて、とにかくここじゃ24日か25日にケーキ食べて子供はサンタにプレゼントもらうんだ。文句言う奴はケーキも菓子もなしだ」
 もうしゃべらないというように2人は手で口をふさいだ。

「メリークリスマス!」
 テーブルの上には母さんの作った料理が置かれている。由鶴の作ったケーキとお菓子はまだ冷蔵庫の中だ。
「シロちゃんとクロちゃんはサンタさんに何をくださいって頼んだの?」
 母さんの質問に笑いながら、
「秘密じゃ」
「……ヒミ、ツ。ちづ、は?」
「えへへ、あたしはぬいぐるみ」
 ゆづ兄ちゃんは? と聞かれて、うーんと唸ってから答えた。
「頼んでない」
「えー!」

「ねぇ、母さん。あの2人何頼んだの?」
 今は23時。天使と悪魔と千鶴はもう寝ている。
「シロちゃんとクロちゃん? お願いした紙見てみる?」
 そう言って見せてくれた紙にはこう書いてあった。
『モクとヨルと仲良く一緒に遊びたい』
 2人とも同じお願い事のようで、同じ紙に名前が2つ書かれていた。
「七夕かよ!」
 由鶴は天使と悪魔のお願い事にお腹が痛くなるまで笑い続けた。
 翌日、天使と悪魔が目を覚ますと枕もとにプレゼントが置かれていた。中身はねこじゃらしのようなおもちゃと手に乗るくらいの大きさの柔らかいボールが入っていたらしい。
「ニャーッ!」
「ギャーッ!」
今日も相変わらず天使たちと猫との勝負が続いていた。
たぶん後ろからそっと抱えようとしたのだろう。だがあと少しというところで気付かれ反撃された。勝ったモクとヨルは互いに違うひなたへ行き、ひなたぼっこを始めている。一方の負けた2人は由鶴のもとに歩いてきた。半泣きで。
「おまえらまだやってんのか」
「うー……ゆづー」
由鶴に頭を撫でられてついに泣き出した。
泣いている天使と悪魔を見かねた千鶴がひなたぼっこをしていたヨルを抱えて2人のそばに連れてきた。そばにいるだけだと暴れもしないのに、天使と悪魔が触ろうとした途端暴れだして床に降りてしまった。
「……なんでだろうね」
「ほんとにな」
4人分のココアを淹れて由鶴がイスに座ると天使が服の裾を引っ張った。
「わしらはモクとヨルと仲良くなれんのかの……」
どうにか泣き止んだ、嗚咽混じりの状態でゆっくり由鶴に話しかけた。やっと止まった涙がまた目に溜まる。
「……一緒、にいっぱい遊び、たい」
悪魔も嗚咽混じりで言った。
天使と悪魔だから好かれないってわけじゃないとは思うのだが。
「……なあ、おまえらモクとヨルに何かしたのか?」
黙って首を振る。
「じゃあ拾ったとき何した?」
うーんと唸りながら思い出して、
「かわいいって言って」
「……ぎゅって、した」
2人の話を聞いて頭を悩ませていた由鶴がはっとして千鶴のほうを向く。
「ちづ、ちょっとぬいぐるみ持ってきて、モクたちくらいの」

千鶴に持ってきてもらったぬいぐるみを天使と悪魔に持たせた。
「……これ、で、何する、の?」
「モクとヨルを拾ったときみたいにぎゅってしてみて」
言われるままに2人はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。するとぬいぐるみにくしゃっとシワがよって軽くねじれた。
「きっとそれだ……」
初めに強く抱きすぎて警戒心を持たれたにちがいない。千鶴も苦笑いをしてぬいぐるみを持っている天使と悪魔を見た。当の本人たちはわけがわからないというかのようにポカンとしていた。

なんとなく原因はわかったけど、まだしばらくは天使たちが仲良く遊ぶには時間がかかりそうだ。
「ほら、こっちじゃぞ」
「……にゃ、あ」
天使と悪魔の呼びかけに応じることなくモクとヨル(白い猫がモクで黒い猫がヨル)は2人の前を横切った。
あれからなんとか母さんと千鶴と由鶴にはなついてきだしたのだが、天使と悪魔はいまだ苦戦中。今も負けて沈んでいる。
「おい、2人ともそろそろ始めるぞ?」
呼ぶといつもよりも元気がない様子でとぼとぼ歩いて来るが、最近では2匹に負けるとこうだ。天使と悪魔に勝った2匹はのんびりとひなたぼっこをしている。
「2人は新聞を敷いて、これに色をつけて」
小袋からどんぐりを取り出してスプレー缶を天使と悪魔の前に置く。使い方を教えたらすぐに理解して着色を始めた。さっきまで沈んでいたのにすっかり元気が戻った。
由鶴のほうも小枝を広げて作業し始めようとすると宿題が済んだ千鶴が窓から顔を出した。
「あたしもやりたい!」
「じゃあこっち手伝って」
バタバタと下りて、靴を履いて外に出てきた。
「この紐でこう結んでな……」
「うー……難しい」
「あーちゃん、白と青も作ろう」
「……うん」

「できたー!」
「……わあ、い!」
「まあ、ちょっと不格好だけどね」
「手作りなんだし不格好なくらいがちょうどいいさ」
天使と悪魔、千鶴、由鶴の前に置かれているのは5つのリース。クリスマス用に作ったのだ。千鶴が言ったように少し不格好だが初めてにしては上出来ではないだろうか。
「リース作りが終わったから次は……」
「……しょう、ぶ」
急いで部屋の中に入っていった天使と悪魔だが……。
ニャーッ!
ぎゃーっ!
……また負けた。
「捨ててこい。というか、戻してこい」
「嫌じゃ。拾ってくださいって書いてあったもん!」
「……ゆづ、人で、なし」
「いや、人じゃないのはおまえたち……じゃなくて!」
天使と悪魔が、遊びに行って、すぐに帰ってきたものだから、何かあったのかと思ったら捨て猫を拾ってきた。しかも2匹。
「とにかくうちじゃ飼わないぞ」
「えーっ!?」
「……ぶぅ」
2人が拾ってきた猫はとても大人しかった。由鶴はまだこの2匹の鳴き声を聞いていないし、暴れる様子もない。じっと天使と悪魔に抱き抱えられている。きっと家までも大人しかったのだろう。初めて猫を飼う人にはぴったりかもしれない。
だが、それはあくまで飼う前提の話だ。もちろん良心は痛むが飼えない。得体の知れない天使と悪魔は家に置いているくせにと言われようが飼えないものは飼えない、が……。
「由鶴のバカー!」
「……にんぴ、にん」
さすがに2人に罵倒され続けて、由鶴の心は折れかけていた。由鶴はもともと動物が嫌いではない。むしろ好きだ。だから天使と悪魔が飼いたいと言ってひかれはした。
うーん……。やっぱりこのまま同じ場所に戻すのも……でもなあ……。

「かわいいわねえ。また戻すのも可哀想だし、ちゃんとお世話できるならいいわよ」
あんなに悩むことはなかったのかもしれない。飼うことが決まって千鶴もなんだか嬉しそうだった。まあ、いちばん喜んだのは言うまでもなく天使と悪魔だが。
「……いたっ!」
後ろから猫が1匹、突っ込んできた。もう1匹も天使たちを攻撃。
……本当はじゃじゃ馬な猫らしい。手なずけるまで苦労しそうだ。
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