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「シロちゃん、クロちゃん、ちょっと来てくれる?」
 呼ばれた2人は由鶴と下に下りていった。
「はーい……って、どうしたんじゃ? その着物」
「浴衣っていうのよ。2着あってよかったわ」
 母さんは黄色と紺色の浴衣を並べて見ていた。帯も2つある。
「黄色がシロちゃんで、紺色がクロちゃんね。2人ともかわいいわ」
 2人に浴衣を着せてみた。サイズもちょうどよくて裾上げをしなくてもよさそうだ。
「今夜はこれで行きましょうね」
「……なに、か、あるの?」
「ああ、祭りがあるんだよ」
 祭りって何? と顔に書いてあるので由鶴は天使と悪魔の2人に説明した。
「人がたくさんいて賑やかでな、かき氷や焼きそばの屋台があるんだ」
「金魚すくいとかも楽しいよね」
 上にいたはずの千鶴がひょこっと出てきた。天使と悪魔はかき氷という言葉に反応して目を輝かせている。口を開けてよだれが垂れそうだ。
「ねえ、お母さん! あたしも浴衣着て行ってもいい?」
 じゃあ裾を下ろさないとね、と言って、母さんは千鶴の浴衣を出しに行った。祭りとなると準備があって忙しい。
「ゆづ兄ちゃんは甚平着るの?」
「そうだな、せっかくの祭りだし、着て行くか」
 祭りが楽しみな4人は、にししと笑った。

 みこしもあるんだぞと言って、絵を描いて教えたらそれも楽しみなようで落ち着きがなかった。
「はい、これでいいわよ」
 母さんがかわいいと連呼している。天使と悪魔は髪を結んでいた。千鶴のほうも着替え終わり、天使と悪魔の2人と同じでいつもと違う髪型をしていた。3人とも似合ってる。
「ゆづくんも似合ってるわよ」
「うん、ゆづ兄ちゃんかっこいい!」
 褒められてちょっと照れた。かっこいいなんて普段言われない。
「はは、ありがとう。おまえらはなんだか姉妹みたいだな」
「あら、そうねえ」
「なら、あたしお姉ちゃん? やった、嬉しい!」
 天使と悪魔と千鶴は女の子同士できゃっきゃはしゃいでいた。由鶴には入れない世界がそこにはあったが、うん、微笑ましい。千鶴も妹ができたみたいで嬉しそうだ。

 初めての祭りを思いっきり楽しんだ天使と悪魔。もちろんかき氷も忘れずに食べた。自分たちもみこしをやりたいと言い出した時はどうしようかと思ったが、由鶴も楽しめた。みんな文句ない祭りだった。

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