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もう少しくらい考える時間を与えてくれたってよかったのにね。神様、そんなに時間が惜しいですか?
「えっと、あの、その……あ、あれだよ。えーっと……」
どうやって説明したらいいものか。正直に、天使と悪魔がやって来て、行く当てがないから家に泊まらせてやってくれ……?
うーんうーん唸っていると、母さんの方が先に口を開いた。
「可愛いお嬢ちゃんたちね。ゆづくんのお友達かしら? ごめんなさいね。気付かなかったわ。今何か飲み物を持ってくるから待っていてね」
「ちょっと待っ……母さん!」
由鶴の言葉に耳を貸すこともなく部屋を出ていった。
「飲み物とはなんじゃろうな。まぁ、それはともかく、何やら」
「……あっさり、と」
「ことが運びそうじゃ」
「……いや、あっさりとことが運んでしまうとそれはそれで怖い」
杞憂だった。
母さんは2人のことを気に入ったらしく、居候をする件もあっさりと承諾(少しは悩んでくれ。おかしいと思ってくれ)。途中で妹の千鶴も参加し、難なく家族と打ち解けたらしく、由鶴はもう会話に入れない状態。
「そうだ、名前聞いてなかった。なんていうの?」
天使が自分たちのことを『天使と悪魔』と紹介し始めたので、由鶴は慌てて天使の口を手で覆う。そしたら悪魔も口を開いたので、こちらも慌てて手で覆った。これから苦労が絶えないことを悟った。
「おまえたち、名前は?」
母さんと千鶴に背を向けて、2人に聞こえないように小声で聞く。そういえば天使と悪魔の名前を知らない。
「そんなものないぞ?」
「は?」
ないことはないだろう、そう思ったがどうやら本当らしい。互いのことを『あーちゃん』『てんちゃん』と呼んでいたが、よく考えれば、それは天使、悪魔からとったものだということがわかった。「ないものはない。ないから天使と悪魔で通してきたんじゃ」
名前はなければ困る。非常に単純なものだが名前を付けることにした。
「母さん、ちづ。こっちが白で、こっちが黒」
「シロ?」
「……ク、ロ……」
天使の名前を『白』、悪魔の名前を『黒』とした。2人の服の色を見て決めた。至って単純なものだった。自分たちに与えられた名前を気に入ったのかそうではないのか、自分の名前を何度も復唱していた。
「わぁ、覚えやすくていい名前だね。ね、母さん」
「そうね。シロちゃんとクロちゃん。本当にいい名前ねぇ」
なんとか危機を乗り越えて安堵をついたが、母さんがとんでもないことを言い出した。
「2人とも、幼稚園に通ってみない? 楽しいわよ」
その提案に千鶴も賛同した。天使と悪魔は、『楽しい』という言葉に惹かれたのか、口をそろえて行きたいと言った。
この流れからすると……。
「行きはゆづくんお願いね」
あぁ、やっぱり?
「……あ、うん」
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