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<それぞれの夏休み宿題事情>

・聡太の場合
「聡太くん、忙しそうだけど宿題とか大丈夫?」
 成績を見る限りでは問題なさそうだが、連日のアルバイトに加えお盆を迎えて以降、いつにも増して疲労感というか、元気のない聡太を布美は心配していた。治久たちと直接顔を合わせていないとはいえ、やはりお盆に連れていくべきではなかっただろうか。
 しかし、聡太に疲れていないかと聞いたところで大丈夫と返ってくるのは目に見えて明らかで、苦し紛れに布美の口から出てきたのは宿題のことだった。口うるさい親のようで自らの言葉に後悔する。やっぱり何でもないと布美が撤回しようとするより先に聡太が答えた。
「大きなものはもう済ませてありますし、残りも少しですから問題ないですよ」
「そう、よかった。あまり無理はしないでね」
 これ以上余計なことを言ってしまわないうちに退散してしまおう。そう思った布美を、しかし聡太が呼び止める。もごもごと、スッとは出てこない次の言葉を布美が待っていると、
「……あの、ありがとう、ございます」
 拙い笑顔でそう言われた。一瞬呆けた布美は我に返ると、どういたしましてと言って今度こそ立ち去った。
 その夕方、張り切って料理をする彼女の姿があったという。
 ――聡太は計画的に進めてしっかり終わらせるタイプ

・修と花の場合
「どうかよろしくお願いしまあああああす!」
 ズササササアッ、とでも音のしそうな勢いで修と花が土下座した相手は成だった。彼は、またかと呆れた目で二人を見ている。
 この光景は修が就学してから変わらない、毎年恒例のものだった。花と親しくなってからは彼女も加わり、しかも量は年々増加の一途を辿る。毎回休み始めに計画を立てさせ、それは周りが見ても何ら無理のないものであるのだが、何故かこの二人は終わらない。別にサボっているわけではなかった。比較的真面目に取り組んでいるはずなのに終わらせられない理由はそのスピードにあった。
 この二人、問題を解くのが恐ろしく遅いのだ。もちろん要領も悪い。それでよく高校受験通ったなと思うが、本人たち曰く、気合いで乗り切ったとのことだった。成としては、その気合いを毎回出してほしいというのが本音だ。しかし、そう上手くはいかない。
 というか、根本的なこととして、年下に頼るのはどうなのだろう。プライドがどうのとかそんな疑問も、誰かに頼ることは恥ずかしことではないという二人の考え方の前にはそもそもないものだと消え失せるのみであった。
「ねえ、俺、受験生なんだけど?」
「そこは承知の上で! 今度二人でスイーツでも奢るから!」
 必死に頼み込む修と花に、はあ、と成はため息を吐いた。
「……二人ともさっさと宿題広げて教科書貸して」
「よかったー! 助かるよ、成!」
「成くん、ありがとう!」
 救いの声に泣いて喜んだ二人は彼の指導のもと、なんとか提出に間に合った。
 ちなみに成はそろそろ学校の勉強にうんざりし始めている。
 ――修と花は、やる気はあるが頭と手のスピードが伴わず、終盤弟を頼るタイプ
   感想文とか作文は二人とも大得意

・仲良しトリオの場合
「宿題終わらねえええええ!」
「気付いたら新学期までのカウントダウンが始まってたとか……」
「僕は終わったけど」
「何それ羨ましい!」
 まだ宿題が多く残る倉本とそれなりに宿題を残している八巻は、三人の中で唯一全て終わっていると判明した西の家に集まった。目的は西の宿題である。二人は写させてもらおうと思ってやってきたのだった。
「本当にさ、毎度毎度のことで学習しないの、二人とも?」
「いや、わかってるんだけどさ」
「こればかりはどうしようもない」
 開き直る倉本と八巻に西は苦く笑う。
 答えを写すだけとはいえ、こうも夏に冬に毎回となれば二人相手に一人では西も正直しんどいところである。もう一人くらい勉強のできる人間が近くに欲しかった。例えば、
「小山とか教えてくれねえかなあ」
「ねえ、とりあえずその他力本願止めない?」
 たしかに思ったけど、と西は心の中で汗を垂らせた。考えていることは一緒だった。
「いや、でも小山は『自分でなんとかしろ』って言いそうな気がする」
「聞いてみるだけでもどうよ?」
 と、西の声は聞こえないふりをして倉本と八巻はどんどん話を進めていった。駄目元でということで、倉本が携帯を手にとって聡太の名前を探すが、見つからない。
「そういえば小山の番号知らねえ!」
「うっわ、聞く以前の問題」
「じゃあ観念して自力でやるしかないよね」
 頑張って、と写せない箇所に頭を抱える倉本と八巻に、西はそばで笑って見ていた。二人は死ぬ気で全てやり切った。
 そして新学期初日の放課後に、彼らは無事に聡太の連絡先をゲットしました。
 ――倉本は嫌なことを後回しにして終盤一気に片付けるタイプ(片付くかどうかの話は別)
   西は序盤に大半を済ませてあとはちょこちょこやるタイプ
   八巻も序盤に勢いよく進めるが終わりまで続かず、気付けば夏休みが終盤に差しかかって焦るタイプ

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