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<貴恵>
「それで、結局あの日は何があったのよ、貴恵?」
彼女の発言から堰を切ったように周りも、そうそうとか、教えてよと迫る。まさか男? なんてぶっ飛んだ想像までかましてくる彼女たちはあたしの友人だ。肉食系とでも言うのだろうか、ことその手の話題にはけっこうぐいぐいくる。
あの日というのは盆あたりに彼女たちと夕飯の約束をしていた日のことで、急な用事で当日ドタキャンをしてしまったのだ。今はまさに喫茶店で奢るというその日の埋め合わせの真っ只中。
「路頭に迷っていた後輩を保護しただけだよ」
へえ、そりゃ偉いわ、さすが貴恵、と周りが感心する中、しかし一人だけ、ん? と首を捻る。
「ねえ、それって前に言ってた後輩くん?」
途端、一斉に注がれる視線。あ、ばれた。
さっき、男? と聞かれたのもあながち間違いではなかった。いや、別にうしろめたさがあって隠していたわけではなくて、それで通ってしまえばそっちのほうが楽だっただけ――というのも、今となっては言い訳以外の何物でもない。どう足掻いたって疚しい気持ちとかそういうふうに取られてしまう。しまった。
それからは一転して非難轟々。
「たしか高校生じゃなかった?」
「貴恵、未成年に手え出しちゃ駄目じゃん!」
「貴恵に限って……犯罪? 犯罪になっちゃうの?」
と、次々と出てくる一方的な言葉を浴びせられこと約一分。こういう一分ってかなり長い。一頻り言い終えて彼女たちが落ち着いたところであたしは口を開いた。
「あんたたち、ここ喫茶店なんだけど?」
少し声のトーンを落としてそう言うと、気付いた彼女たちははっとして口を噤んだ。
「たしかに晩ご飯作って泊めはしたけど」
「じゃあ、やっぱり!」
被せ気味に言う彼女の頭にあたしは手刀を落とす。人の話は最後まで聞け。
「あたしはネットカフェに泊まったの。朝ご飯は作ってもらって帰ってから食べた」
初めて行ったネットカフェはなかなか過ごしやすかった。個室だし、起きちゃってもネット使えるし。そしてさすがと言うか何と言うか、小山は料理が上手い。晩にあたしが出したのよりおいしかったんじゃないの、あれ。悔しい、でもおいしかった。ちくしょう、小山め。
「でもでも、てことは貴恵の布団使って寝たってことでしょ、後輩くん」
「いや、元通り過ぎて使ったかは知らないし」
「料理振る舞ってお返しに料理してくれる男の子とか、羨まし過ぎる!」
「何それ、恋人みたいじゃん!」
「付き合っていることは付き合っているの?」
だから違うと。もう、どうして何でもかんでもそっちに持っていっちゃうのよ、あんたたちは。
小山は性格上借りを作りたくないとかそういうことだろう。ご飯もらって泊めてもらって、そのお礼に朝ご飯を作るのを申し出たに過ぎない。布団も、使っていたとしてもきっちり元通り戻していそうだけど、あれはたぶん使っていない。座って寝でもしたのか、あいつは。そういうところが可愛げがないのだといつもいつも……。ため息を吐いた。
「そもそもタイプじゃないね。あたしは年上のしっかりした人が好き」
「あくまで理想でしょ? 実際に好きになる人って違うこともある、し」
彼女があたしを見て固まる。いい加減にしないと口閉ざさせるよ、実力行使で? と拳をチラつかせながら無言で黙らせた。すみませんでしたという言葉が聞こえた。
「単純にほっとけないだけだって。弟に近いかな。みんなだって家族が困ったら手を貸すでしょ? そんな感じだよ」
そう言って、渋々ながらも彼女たちは何とか納得してくれた。これで落ち着く。
あんなことがあったにもかかわらず小山について詳しいことは知らずじまいで、元々深入りするつもりなんて毛頭ないけど、何だかなあ。もうちょっと何とかならないものかとは思う。
そのあとは一時小山の話題になり、会いたい会いたいと言う彼女たちと実際に会う小山を想像して一人笑った。彼女たちとの出会いも小山の何かにはなるかもしれない。それなりの出費にはなったけど、まあそれも悪くないかな。なんてね。
「それで、結局あの日は何があったのよ、貴恵?」
彼女の発言から堰を切ったように周りも、そうそうとか、教えてよと迫る。まさか男? なんてぶっ飛んだ想像までかましてくる彼女たちはあたしの友人だ。肉食系とでも言うのだろうか、ことその手の話題にはけっこうぐいぐいくる。
あの日というのは盆あたりに彼女たちと夕飯の約束をしていた日のことで、急な用事で当日ドタキャンをしてしまったのだ。今はまさに喫茶店で奢るというその日の埋め合わせの真っ只中。
「路頭に迷っていた後輩を保護しただけだよ」
へえ、そりゃ偉いわ、さすが貴恵、と周りが感心する中、しかし一人だけ、ん? と首を捻る。
「ねえ、それって前に言ってた後輩くん?」
途端、一斉に注がれる視線。あ、ばれた。
さっき、男? と聞かれたのもあながち間違いではなかった。いや、別にうしろめたさがあって隠していたわけではなくて、それで通ってしまえばそっちのほうが楽だっただけ――というのも、今となっては言い訳以外の何物でもない。どう足掻いたって疚しい気持ちとかそういうふうに取られてしまう。しまった。
それからは一転して非難轟々。
「たしか高校生じゃなかった?」
「貴恵、未成年に手え出しちゃ駄目じゃん!」
「貴恵に限って……犯罪? 犯罪になっちゃうの?」
と、次々と出てくる一方的な言葉を浴びせられこと約一分。こういう一分ってかなり長い。一頻り言い終えて彼女たちが落ち着いたところであたしは口を開いた。
「あんたたち、ここ喫茶店なんだけど?」
少し声のトーンを落としてそう言うと、気付いた彼女たちははっとして口を噤んだ。
「たしかに晩ご飯作って泊めはしたけど」
「じゃあ、やっぱり!」
被せ気味に言う彼女の頭にあたしは手刀を落とす。人の話は最後まで聞け。
「あたしはネットカフェに泊まったの。朝ご飯は作ってもらって帰ってから食べた」
初めて行ったネットカフェはなかなか過ごしやすかった。個室だし、起きちゃってもネット使えるし。そしてさすがと言うか何と言うか、小山は料理が上手い。晩にあたしが出したのよりおいしかったんじゃないの、あれ。悔しい、でもおいしかった。ちくしょう、小山め。
「でもでも、てことは貴恵の布団使って寝たってことでしょ、後輩くん」
「いや、元通り過ぎて使ったかは知らないし」
「料理振る舞ってお返しに料理してくれる男の子とか、羨まし過ぎる!」
「何それ、恋人みたいじゃん!」
「付き合っていることは付き合っているの?」
だから違うと。もう、どうして何でもかんでもそっちに持っていっちゃうのよ、あんたたちは。
小山は性格上借りを作りたくないとかそういうことだろう。ご飯もらって泊めてもらって、そのお礼に朝ご飯を作るのを申し出たに過ぎない。布団も、使っていたとしてもきっちり元通り戻していそうだけど、あれはたぶん使っていない。座って寝でもしたのか、あいつは。そういうところが可愛げがないのだといつもいつも……。ため息を吐いた。
「そもそもタイプじゃないね。あたしは年上のしっかりした人が好き」
「あくまで理想でしょ? 実際に好きになる人って違うこともある、し」
彼女があたしを見て固まる。いい加減にしないと口閉ざさせるよ、実力行使で? と拳をチラつかせながら無言で黙らせた。すみませんでしたという言葉が聞こえた。
「単純にほっとけないだけだって。弟に近いかな。みんなだって家族が困ったら手を貸すでしょ? そんな感じだよ」
そう言って、渋々ながらも彼女たちは何とか納得してくれた。これで落ち着く。
あんなことがあったにもかかわらず小山について詳しいことは知らずじまいで、元々深入りするつもりなんて毛頭ないけど、何だかなあ。もうちょっと何とかならないものかとは思う。
そのあとは一時小山の話題になり、会いたい会いたいと言う彼女たちと実際に会う小山を想像して一人笑った。彼女たちとの出会いも小山の何かにはなるかもしれない。それなりの出費にはなったけど、まあそれも悪くないかな。なんてね。
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ものごとを『おもしろい』か『おもしろくない』かで分けてる“へなちょこりん”です
外ではA型、家ではB型と言われます(*本当はB型)
家族に言わせれば『しゃべりだすとおもしろい』らしい
寒天と柑橘が大好きです^^
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