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<貴恵>

 今時のというか、高校生はああも悩むものなのか。正直、相対的に見ると自分が悩まなさ過ぎて『普通』なんてものがわからないから何とも言えない。誰か教えてほしい。
 自分が高校生のときは、周りはわたしのことを羨ましい、羨ましいと言っていたけど、わたしからすればうんうん悩んでいる周りのほうがずうっと羨ましかった。
 何か気になることができて、悩んで、必死になって悩んで、友達に相談して、友達も巻き込んで悩んで、助けてもらいながら、上手くいったりいかなかったり、その結果で喜んで、それか悲しんで。
 友達のことでも、勉強のことでも、恋愛のことでも、何でも。
 そこに『青春』の要素が、ぎゅうっと、凝縮されて詰まっているように感じる。人間生きていれば悩むこともこの先あることには違いなくても、大人になってからの悩みとはまた違うものが、所謂『青春時代』にある。青くさいだとか、甘酸っぱいだとか、それこそが『青春』をより特別なものであると意識させ、『青春』の最大にして最高の特色だと思うのだ。
 だから、いくら友達に、似合わない、意外だと言われても、いくら陳腐でチープでも、わたしは青春小説が好きだった。自分が経験し損ねて取りこぼしたものを埋めていくように、本棚にはズラリとそれが並んでいる。
 割と小さいことで悩み始めるのがおもしろい。小さい悩みが知れず大きな問題になっていく展開がおもしろい。『外』から見れば存外簡単に紐解けそうなのに、それに必死になっている人物たちがおもしろい。読み終わったらとてもすっきりして晴れやかな気持ちになるのが最高だ。
 大学生になってからも自分の要領のよさは変わらない。周りから言われる『羨ましい』も変わらない。それでも少しずつ、自分にも『青春』の影がちらりほらりとその姿を現し始めている。そうだ、きっと、自分の進む道が見えたからだ。『夢』なんて言うとこそばゆいけど。
 あ、小山の前で『夢』とかいう単語を口にした気が……やったな、わたし。
「お疲れさまです」
「お、小山、もう上がり?」
 コクリと頷く小山に、そういえばさっき言い忘れていたことを思い出して話を切り出した。
「さっきの話でさ、やたら大学推しみたいな感じになったけど、あんたがちゃんと決めたなら就職のままでありだと思うよ」
「え?」
「ん? 何か変なこと言った?」
 あまりに小山が驚くものだからわたしもびっくりして。でも、聞いても、何でもないですの一点張りで、結局小山は教えてくれないまま帰っていった。その口元は不思議と口角が上がっているように見えて、まあいっかとわたしは仕事に戻った。

 その後、小山が高校を卒業して店を辞めるとき、そのときのことを話してくれた。
 当時は小山の進路について誰もが進学して当たり前のような反応で、就職なんて答えると揃って驚かれたのだという。だから自分の選択に自信がなくなって、かといって流されるように進学を選ぶのも違う気がして、どうすればいいのかわからなくなっていた。わたしに大学について聞いたのはそんな折だった。
「就職を選んでいることのほうがさも当然みたいな言い方、貴恵さんが初めてでした」
 思い出したのか、小山は控えめに笑い出して、こんなふうにも笑うのかと、わたしは最後になって新しい発見を珍しがっていた。
「たぶん、嬉しかったんだと思います」
「ふーん。じゃあ、わたしの小山を見る目はそれなりにたしかだったってことか」
 そんなこと考えていたんですか。
 悪いか、この野郎。
 ちょっと小馬鹿にした小山の態度と、それに、生意気だと言ってわたしが小山を小突くというやり取りもこれで最後かと思えば、まあ、感慨深いものはある。その上『ありがとうございます』なんて言うものだから、泣きはしないけど、自分が『青春』の中にいるという実感が沸々と湧き上がってきて何とも言えない気持ちになった。強いて例えるならばそう、一つの青春小説を読み終えたときに似ている。わたし自身の『青春』ではないけど、『小山の青春』の中に知らず自分が組み込まれていた事実に、うん、悪い気はしない。
「貴恵さんといて、楽しかったです」
「わたしも小山と仕事できて楽しかったよ」
 そう言って、初めて二人して笑った。

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