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「僕は行くなんて一言も言ってない」
聡太の腕は今、がっちりと掴まれている。修に。そして聡太が押している自転車の荷台も掴まれている。あと一人は誰と言わずともわかるだろう。もちろん花だ。
「いいか、花。放すなよ?」
「合点だ!」
経験はないが、さながら警察に連行されている気分だった。放課後、帰ろうとしているところを引き止められて引っ張られているのだから、まああながち間違いではないかもしれない。
それはそうと。聡太が二人に連れられているのは修の家に呼ばれたからだ。家に来いと言われて頭に疑問符を浮かべながら、理解できないうちに両脇を拘束。周りの奇異の目に晒されながら二人にされるがまま、今に至る。
「小山、家の人に連絡入れとけよ。帰りが遅くなるのと、晩飯いらないこと」
「おばちゃんのご飯、おいしいんだよ」
何故ご飯の話がここで唐突に出てくるのか。お腹が空いただとか、今日のご飯は何だろうだとか。のんきに話している修と花に、聡太は間抜けた顔になり足が止まった。
「は?」
合わせて止まれなかった修に引っ張られた腕が痛い。力を入れ過ぎだ。加減を知れと思った。
「修君とは小学生の頃からの付き合いでね」
花は修の家族とも仲が良く、向こうの厚意でたまにこうして夕飯に呼ばれるらしい。
なるほどと納得しかけたが聡太が聞きたいのはそこではない。聡太が問題にしているのは、何故自分が修の家に呼ばれて、更には夕飯の話になっているのかだ。
「いや、そういうことじゃ……」
「早くしないともうすぐ着くぞ」
噛み合う気配のない会話に肩を落とす。修が言う通り、学校からもう大分歩いており帰るに帰れなくなっている雰囲気でもある。仕方がない。渋々メールで布美にことの経緯を伝えると何とも快い返事がきて、聡太は更に深いため息を吐くのだった。このため息は布美にではなく、もしかしたら布美が駄目だと返してくれるかもしれないという、限りなくゼロに近い薄い希望を抱いた自分に、だ。
「ここが俺ん家」
ついに着いてしまった。
適当な場所に自転車を置かせてもらい、促されるまま中へ入る。ちょうど修の母親らしき人が出てきた。友達かと聞かれたのできっぱりと否定しておいた。
「そうだった。まだ俺らの一方通行だった」
「いっぽーつーこーだって」
「兄ちゃん、かっこわるーい!」
すると階段のほうから小学生くらいの男の子二人が出てきた。けらけら笑ってからかう二人を修はその場で怒ったふうに文句を言う。修が靴を脱ぎ始めたところで、また二人。今度は中学生くらいの女の子と男の子が下りてくる。
「おかえりー」
「早く靴脱いだら?」
一気に四人もの子供が現れてさすがの聡太も驚き、花と二人、玄関に残された。
「びっくりするよね、こんなに賑やかだと」
聡太の返事を待たずに花が続ける。
「先に出てきたのが拓くんと陸くん。女の子が照ちゃんで最後の男の子が成くん。みんな修くんの弟と妹なんだよ」
やっぱり賑やかなのっていいよね。
ほのぼのしている花がなんだか幸せそうで懐かしそうで、聡太は何も言えなかった。先に上がっていた修が呼ぶと花は、はーいと返事をして靴を脱ぐ。
「行こう? おいしいし、それにすごく楽しいから」
奥にいた修も戻ってきて花と一緒に手を差し出す。
「ほら。上がった、上がった」
さっきまでは嫌だと思っていたのに。自分に差し出されたその手を、取らずにいられなかった。
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家族に言わせれば『しゃべりだすとおもしろい』らしい
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