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<花>

 修くんが気まずそうにしているのと、小山くんの頬の湿布を見て、ああ、なるほどと、あたしは一人で何となく納得していた。
 前にもあったのだ。似たようなことが。
 生まれるならば、修くんの家みたいなところに生まれて楽しく暮らしていたかったと、思うことがよくあった。
 修くんの家があまりにも居心地のいいものだから、園での生活がなつかしくなって、帰りたくなって。今の家にいまいち居場所を作れなくて、どうして里親に引き取られてしまったのだろうと、自分の存在意義さえわからなくなって。
 ある日、ポツリと漏らした言葉に、
「帰りたいなら帰ればいいんじゃないの?」
 と。前の言葉には返してくれたけど、
「何でそんなこと言うんだよ!」
 と。後ろの言葉には、頬の痛みと怒りの声を浴びせられた。突然のことにびっくりしているあたしより先に何故だか修くんが泣いて、それからあたしも涙が出てきて、その日は二人一緒にいっぱい泣いた。
 修くんと笑うような気分にはなれなくて、数日ろくに顔も合わさずに過ごした。友達は、修と花がケンカした! と賑わっていて、少しうっとうしかったのを覚えている。だから、小山くんが声を荒げて叫んだのもわからなくはなかった。
 修くんといない間は一人の時間がずっと増えた分、今の『お父さん』と『お母さん』について考えることができて。気持ちの整理がつくと不思議なくらいの勢いで問題が解決した。気まずかったのなんてもう頭にはなくて、その次の日に、仲良くなったお父さんとお母さんの話をすると、修くんも目一杯喜んでくれた。修くんの小さい頃の出来事をおばちゃんに聞いたのは、それから最初に修くんの家に遊びに行ったときだった。
「あれ? 花、一人?」
 残ったお弁当を片手に教室へ戻るとまだお昼ご飯中の友達がいて、ちょうどいいと仲間に入れてもらった。
 修くん、昔の話をして顔真っ赤になっていたけど、仲直りの手伝いを修くんがお願いしてきたんだから、それはしょうがないよね! 今頃どうなってるんだろ? まあ、仲直りしているには違いないだろうさ!
 そういえば、あたしのときはビンタで、力も小学生のときだからあれだったけど、小山くんの頬に湿布が貼られていたということは、つまり相当腫れたということで。
 もしかしてグー? 高二の今の体格で、グーでいっちゃったの、修くん!
 うわあ、痛そう……と、想像して自分の頬を押さえていると、並んで二人が教室に帰ってきた。修くんが自分の席に戻る前、あたしのそばを通ってお礼を言った。
「花、ありがとう」
 近くに寄ってきて気付いたのだけど、修くんのおでこが少し赤くなっていた。何でだろう。
 それにしても、グーでケンカかあ。
 それはやっぱり男の子特有の何かで、男の子の特権というか何というか。
「いいなあ、男の子」
 決して女の子が嫌なわけではないけど、見ていると少し羨ましくなってきた。

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