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 新学期が始まって一ヶ月弱。面倒なことになったと聡太は頭を抱えていた。
 当初の予定では、今頃、聡太はクラスから孤立して一人でいるはずだった。また誰にも干渉されず比較的楽に過ごしているはずだった。なのに……。
 一体全体どこでどう狂った。そう思わずにはいられなかった。
 初日の挨拶。第一印象は最悪だった。無表情もいいところで、自己紹介とは名ばかりの、本当に名前だけの挨拶。よろしくもなし。にこりともしない。嫌われてもおかしくない聡太の行動。しかし新しいクラスメートには、それが緊張していると見えたらしい。生徒の数が多くなく、転校生が珍しいのか翌日からたくさん周りに集まってきた。うっとうしく感じながらも、嫌な奴に見せようという第一印象を失敗している以上、わざわざ寄ってくる者を遠ざける必要がなくなったので聡太は努めて笑顔をつくってみせた。
 愛想笑いはある人から教えてもらった処世術だ。今まで他人と必要以上に関わることなくうまくやっていけたのも愛想笑いのおかげに違いない。
 ところで聡太を悩ませているのはこれらのクラスメートではなく別の二人。
「晴れてる日は外で食べるのもいいな」
「そうだねー」
 宮守修と寺岡花だ。二人とも聡太のクラスメートであるが他とは違っていた。前の学校や住んでいたところ、家族のことには全く触れてこない。他愛ない会話ばかりで、その多くは修と花で話している。聡太にも話を振るが答えなければそのまま流していた。無理に答えさせる気はないようだ。
「小山の弁当おいしそうだよな。まさか小山が作ってんのか?」
 黙々と食べ進める聡太の弁当を横からのぞき込んで修が言う。たしかにと花も自分のものと比べてみた。
「……叔母さん」
 二人の話を流していた聡太は、口の中のものを噛み終え空にするとおもむろに口を開いた。ただの気まぐれだった。自分でも何故答えたのかわからなかった。まさか聡太が返事をするとは思っていなかった修と花は、余程驚いたのかポカンとした。そしてすぐに、ぱあっと周りに花が咲くのが見えるくらい明るくなる。きっとどんどん咲いては飛んでいっているに違いない。二人が喜んでいるのが目に見えてわかるほどだ。
「……そっか! じゃあ叔母さんと一緒に住んでいるんだね。料理が上手で羨ましいなあ」
「花とは大違いだな」
「あたしだって作れるもん。たぶんだけど」
 聡太は止めていた箸をまた動かし始めた。食べ物を口に運ぶ。それ以上口をきくつもりはなかった。修も花もそのことをわかっているようで、たいして気にはしなかった。
 食べ終わった聡太は席を立とうと弁当をしまう。聡太には修と花が理解できなかった。特別何かをするわけでもなくただ傍にいる。会話に交ざることを強要しないが、さっきみたいに何でもない、たった一言を返すだけでこれ以上ないというくらい喜ぶ。気持ちが悪いくらい。二人が何をしたいが為に自分の近くにいたがるのかさっぱりわからない。言うまでもなく聡太と友達になりたいから近付こうとしているのだが、友達をつくろうとしない聡太に理解できるはずがなかった。
 そんな聡太にもわかることは、
「今日こそ一緒に帰ろうねー!」
 とても図太い奴らだということだ。
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