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あのあと、フーとムーが再度やって来てこっちにいていいのは3月末までと告げた。
残り3ヶ月というのは決して長くはない時間で、それからというもの、天使と悪魔の2人は沈んだまま日々を過ごした。元気のない2人を心配して母さんと千鶴が声をかけるが首を振ることしかしない。天使と悪魔が騒がない家の中は気味が悪いほどにとてもしんとしていた。
そしてあっという間に2月になった。
「はあ……自分の家なのになんか重苦しいね」
「まあな……」
天使と悪魔は由鶴の部屋。由鶴はリビングで千鶴と話していた。
「ねえ、何があったの?」
「……知らない」
「えー? 絶対ゆづ兄ちゃん知ってるでしょー!」
「だから知らないって」
本当は知っているがどう説明しろと言うのだろうか。『3月にここを出ていく』と言えばいいのだろうか。
「あーあ、嫌なものばっかり溜まってるみたい」
ぶつぶつと文句を言っていた千鶴がカレンダーを見て、あ! と叫んだ。近くにいた由鶴はうるさいというような顔をして、何だと聞くと指を指して、カレンダーを見てと言った。
「今日節分だった! 豆まきってシロちゃんもクロちゃんも喜びそうだと思わない? ゆづ兄ちゃんが鬼役でみんなで豆まきしようよ!」
台所にいる母さんに同意を求めると、
「いいわね」
と言い、由鶴も天使たちが元気になるならと賛成した。

ドアを開けて天使と悪魔を呼んだ。しかし反応がないので持っていた豆を頭目掛けて投げてみる。するとやっとこっちを向いた。
「……何で鬼の面など……」
「今日が節分だから。下で豆まきしないか?」
顔に当てていた面を除ける。そしてもう一度天使と悪魔の近くに豆を撒いた。
「……そういう気分、ない」
誘うのに失敗したが由鶴はここで諦めなかった。ふうっと息を吐いて先ほど顔に当てていた面で2人の頭を叩いた。紙でできているので痛くはないが、突然叩かれたことに驚いている。
「あのな、帰って寂しい思いするのはおまえらだけじゃないの。千鶴や母さんだって寂しいって思うんだ」
考えたんだ、天使と悪魔が帰るから何をすればいいのかって。天使と悪魔が寂しくて沈むのはわからなくはないが、だからといってずっと沈んでいるのはいいことではないと思う。2人にとっても僕たちにとっても。
じゃあ何をすればいいのか。
「とりあえず楽しんどけ。もったいないだろ、な?」
話を静かに聞いていた天使と悪魔の口がゆっくりと開いた。
「……ゆづも寂しいと思うのか?」
「もちろん」
「……だか、ら、楽しむの、たい、せつ」
「そういうこと」
だんだん明るい顔になっていく天使と悪魔にもう一度聞いた。
「豆まきするか?」
「するー!」
天使と悪魔はバタバタと慌ただしく階段を下りていった。由鶴も下りると千鶴が、
「さすがゆづ兄ちゃん」
と言ってハイタッチをした。
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