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<花>

 激しく後悔した。
「親、いないんじゃない?」
 なんて。本当にそうだとしても、そんなにサラッと聞いていいものでないとわかっているはずなのに。自分の、親がいないという告白も、そんなの言われて困るだけだというのに。
 そのあとの記憶は曖昧も曖昧だ。どうやって部活に顔を出したのか覚えていない。あるのは心配そうな顔をしている部活仲間と、ひたすら走ったという数少ない情報。そして今は自分の部屋のベットに飛び込んでいる。
「やっちゃった……」
 言った瞬間、小山くんの体が強張ったということは、当たったということだろう。とはいえ、あれは当てずっぽうのようなものだったのだ。
 小山くんのことが気になり始めたのは、転校してきたその日からだった。不思議と目が離せなくて、そしたら小山くんもあたしを見て目が合った。そのとき感じた『何か』はずっとわからずに胸に引っかかったままだった。ちなみに目が合ったのが嬉しくて、それはあとで修くんに自慢した。
 小山くんは自分から他人と関わろうとしない人だ。それでも周りに人が集まっているのは、転校生という珍しさの勢いにそのままクラスのみんなが交流を続けているからだ。小山くんもそれなりに言葉を返すから誰も気付かない。でも修くんとあたしは知っている。小山くんが自分から話しかけたことなんて一回もないことを。
 あたしたちが知っているということを小山くんも知っていて、だから修くんとあたしだけにはみんなとは違う顔を見せる。きっとそれが素に近い小山くんだ。冷たく突き放すような言葉と態度に、あたしは心当たりがあった。
 それから、いつかおばさんが作っているのだと言っていたお弁当。それだけで決めつけちゃうのはよくないけど、親がいなくておばさんと住んでいるのかなと思った。気になったけど修くんは何も言わなかったし、それを口にして聞くつもりなんてこれっぽっちもなかった。
 それなのに、よりにもよって口から出てしまった断定した言葉。
 引っかかることが増えていくと、あたしの感じていた『何か』も少しずつ解け出して。その上に、小山くんと二人きりで鉢合わせるというシチュエーション。勝手にあたしの頭がそれぞれのパーツを組み合わせて飛び出てしまった、というのがあの言葉の真実だったわけなんだけど。
 でも、そんな言い訳はどうでもいい。自分の言葉で小山くんを傷つけてしまったのかもしれない事実が今重要なのであって。
「どうしよう……」
 あたしがしたかったのは小山くんを傷つけることじゃなくて、逆のことだったのに。じんわりと涙も滲んでくる。
「うー……あたしの馬鹿あ」
 でも、こんなに後悔しながらもおいしいご飯に飛びついてしまうのは、やっぱりあたしであって、また悔しくて涙が出ました。
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