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<修>

「なあ、修。聞いたか?」
 と。声をかけてきたのは中学から一緒の友達で、特に心当たりのない俺は首を振って返した。
 すると、友達は近くに寄ってきて、周りに聞こえないようにこそこそと、
「なんか、寺岡、泣いてたらしいぞ」
「はあ?」
 あまりにびっくりした俺は友達の行動に反して間抜けた大きな声を上げてしまい、そうすれば賑やかな中もクラスの注目が集まる。友達も呆れた顔をしていて、周りにはなんとか笑ってごまかした。
 言われてみれば、朝会ったときに花の目が赤くなっていた気がする。手や腕でこすったあとも。
 でも、それは不思議なことだった。花が転校してきた頃は、それは幾らか泣くこともあったのだけれど、友達ができてクラスに馴染み始めてからはほとんど涙を見せなくなったからだ。よっぽど悲しいことでもあったのだろうか。
「それで、誰が泣かせたと思う?」
「誰って、誰かが泣かせたの?」
 それこそ信じられない話で、別にいじめられるような奴でもなかったはずなんだけど。
 また友達が耳元で小さく答えた。
「なんでも、小山が泣かせたって話」
 今度は大きな声を出さず、というよりも、声が出ないほど驚き過ぎて俺は目を丸くする。
「それ、まじで?」
 うん、と、頷いた友達は、そう聞いたと言った。

「――っていう話なんだけど」
 昼休みに花を問い質した。
 なんか放っておけないから構い倒していたけれど、花を泣かせるというのなら小山への当たりを考え直さなければならない。小学生からの付き合いで大事な花を引き合いに出すまでもないだろう。あくまで優先すべきは花だ。
 俺は真剣に聞いていたのに、花は飲んでいたお茶を吹き出した。そして、むせた。
「ゴッホ、ゴホッ……。ちょ、修くん。それ、誰に聞いたのさ」
「由人」
 友達を売るというか、あっさりと俺にとっての情報源を教えると、よっしいめ……と花は恨めしそうに友達の名前を呼んだ。
「で、どうなの」
「どうも何も、誤解だって、誤解!」
 真っ赤な顔をしたまま、花は今朝の出来事について説明する。
 花の話を聞き終えると、ストンと腑に落ちてしまった。
 たしかに小山は、言葉や態度はちょっときついけど、かといって誰かを泣かせるような奴には見えないし。
 なーんだ、と、今日悩んでいたことが馬鹿らしくなった。これで万事解決。よかった、よかった。
 でも何か忘れているような……。
「……さて、と。ちょっとよっしい探してくる」
 花を見送ったあとで、あ、と友達への被害の可能性をようやく思い出したけど、でも花を止める方法を持っていない俺は何もすることができず、静かに友達へと両手を合わせるのだった。
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