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今ではいろんなものが見えるようになりましたよ。
そう言ったとして、彼は、そりゃよかったなと素っ気なく返すのだろうと容易に想像ができてしまって、聡太は一人笑った。
新しい部屋。すでに片付けられた荷物は以前よりも少なくなったが、見えない気持ちとして詰まっているものはずっとずっと多い。小さい頃から待ち望んでいた一人暮らしはこれからの期待に溢れる思いの一方で寂しくもあり、非常に複雑だ。
十八歳。これから大学生。未成年であることに変わりはないけれど、社会で一人で生きていくにはまだ幼いだろうか。体は少し大きくなったかもしれない。この二年での聡太の成長は、外見よりも内面のそれのほうが著しかった。それまで感じていたもどかしさは、もう見る影もないほどにほとんど薄れている。今だったら何でもできそうな気がした。
例えば、空を飛ぶ……というのは、さすがに冗談ではあるけれど。
支度を済ませた聡太は外へ。
きっと彼がいるとすれば今の時間だ。誰を介することもなく、真っ先に彼に会うならこの時間が一番いい。
散歩がてらというより、むしろついでなのは散歩のほう。周りの景色よりも目的が優先されて、ただひたすら歩いた。まっすぐ、まっすぐまっすぐ。ちょっと曲がって進んでまた曲がって。あとはまっすぐ、まっすぐ。
あ、いた。
せっせと花壇に水やりをしている姿が見えて、思わず足が速くなる。ついにはもう走っていた。人通りもまだ少ないこの時間帯には、駆け寄ってくる音や気配をかき消してしまう要素などほとんどない。聡太に気付いて一瞬驚いた顔を見せた彼だが、そばまで寄り切ったときにはフッと笑っていて、
「よう、おかえり」
聡太も自然と口元に笑みを携えていた。
もう一度この町で暮らそうと決めたのは、ここにも『家』があるから。あの人たちとも、今度は正面から向き合おうと思ったから。
そして、こう言うのだ。
「ただいま」
帰ってきた、この町で。
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家族に言わせれば『しゃべりだすとおもしろい』らしい
寒天と柑橘が大好きです^^
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