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 こんにちは。啓太です。小学四年生になりました。学校が夏休みになって、わがままを言ってお兄ちゃんが一人暮らしをしているお家へ遊びにきています。
 そして、今、僕の目の前に、お兄ちゃんの、お兄さんがいます!

 お兄ちゃんはお仕事で、僕はその間、お店の隅の席で勉強をしながらお仕事が終わるのを待っています。少し前に桔平お兄ちゃんがやってきました。お兄ちゃんのお兄さんです。背が高くておっきいから怖い人だったらどうしようと思っていたけど、話してみたら全然そんなことありませんでした。よかったです!
「あ、お兄ちゃん!」
「……うん、待たせてごめんね、啓太」
 僕たちがいる席に近付くにつれて何故かじわじわと機嫌の悪そうな顔に変わっていったお兄ちゃんは、ものすごくじとっとした目でお兄さんを見ています。反対に、お兄さんはすごく楽しそうな顔をしてお兄ちゃんに手をひらひらと振っていました。
「……なんでいるんですか、桔平さん」
「今日は半休なんだよ」
 休憩室でお兄ちゃんと一緒に遅めのお昼ご飯です。お店のおじさんがナポリタンを作ってくれました。お腹が空いていたのもあってとてもおいしいです。
 先にご飯を食べてきたらしいお兄さんは、隣でコーヒーを飲みながら、そうだと何か思い出したようにお兄ちゃんを指差しました。
「そういえば、啓太もいて布団はどうしてるんだ? まさかもう一組買った?」
 当然お兄ちゃんの家には、一人暮らしだからお布団はお兄ちゃん用の一つしかありません。それもあってお母さんは僕がお兄ちゃんのところへ行くのを、迷惑になるでしょうと言って反対したけど、今は夏だから昨日はお布団を横にして、タオルケットだけ買い足してお兄ちゃんと一緒に寝ました。冬じゃなくてよかったね、とお兄ちゃんと話していたところです。
 お兄ちゃんから事情を聞いたお兄さんは突然、ガタッと立ち上がって、
「おまえら、食い終わったら車に乗れ!」
 そう言うと、ご飯を食べ終わった僕とお兄ちゃんを車に乗せて、着いた先はお兄ちゃんの住んでいるアパート。僕の荷物と、お兄ちゃんはお泊りセットを作って持って、今度はお店の裏にあるお家に着きました。お店のおじさんとおばさんのお家だそうです。なるほど。
 ……あれ? でも、どうしてここに来たんだろう?
 お兄ちゃんはずっと、どこか諦めたような顔をして言われるがままに荷物を運んでいます。
「啓太が家の帰るまで、それまではここが啓太と聡太の泊まる部屋な」
 お兄さんが使っていたという部屋にはベッドが一つあって、あとで床にお布団を敷いてくれるみたいです。少し不満げだったお兄ちゃんも、お兄さんと何か話しているうちに納得していました。
 晩ご飯はお兄ちゃんとお兄さんと、おじさんとおばさんと五人一緒です。お兄ちゃんとお兄さんが作ったおいしいご飯を食べていると、お店でお手伝いしてみない? とおばさんから提案されました。
「タダじゃご飯は食べられないのよ? なんてね」
 おばさんの言う通り、たしかにそうです。それに、お手伝いしないと駄目よとこっちに来るときにお母さんにも言われました。
「まだ聡太くんが小学生で手伝っていた頃を思い出すな」
 おじさんの言葉に、お兄ちゃんもやってたの? と聞くと、そうだよと返ってきました。
 お兄ちゃんがやっていたことと同じことを僕もできる。これはやらないわけにはいきません。
「僕、お手伝いしたい!」
 はい! と手を上へ伸ばして答えた僕に、おじさんとおばさんは笑って頷いてくれました。

 次の日からお家に帰るまで、お兄ちゃんがお仕事のときには僕も一緒にお手伝いをしました。
 おばさんが用意してくれたエプロンを着て、開店前のお店の掃除をしたり、花壇に水をやったり、お皿を下げたり、テーブルを拭いたり。
 お昼にはお兄ちゃんと一緒にご飯を食べて。
 お兄さんが顔を出したときにはお兄ちゃんが少し嫌そうな顔をして。
 お仕事で来ている他のお兄さんやお姉さん、よくお店に来るというお客さんともたくさんお話して。
 少し暇な時間ができたら、ご飯とかケーキを作るお手伝いもさせてもらって。
 お兄ちゃんのお仕事が終わると裏のお家に戻って宿題もして。
 あ、近所でやっているお祭りにも連れて行ってもらいました。
 そうして、いつものようにお家にいるだけでは経験できないような新しいことをこれでもかというくらいさせてもらって。
 最後の日にはお兄さんも駅まで見送りに来てくれました。
「じゃあな、啓太。また来いよ」
「うん! またね、お兄さん!」
 帰ったらお父さんとお母さんに話したいことが山のようにあります。そうだ、たくちゃんにも聞いてもらおう。うーん……何から話したらいいかなあ。
 お家に着いてからお母さんに、こんなことがあったんだよと話していると、最初は頷いて聞いていたお母さんが目をまあるくして驚いて、飛んでどこかに電話をかけに行ってしまいました。まだ話したいことがあるのになあ。
 それから、お母さんはおばさんと仲良くなったようで、二人が電話で話しているところを時々見かけるようになりました。

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